
【身に覚えのない過去の過ちを突きつけられたとき、あなたはどうしますか?】
まるで、他人の人生のどまんなかに、パラシュートで着地したような感じだ。おれにそっくりな、おれではない他人の人生に。
(本文 より)
転落事故で記憶を失った主人公、チェース。彼はどうやら、学校1のスポーツマン。
父親からの評価は上々だけれど、記憶を失う前の彼はどうやらいい一面だけではなく…。
主人公チェースは、記憶を失う前は乱暴者で、一人の生徒を転校にまで追い込む粗暴な青年でした。
けれど、記憶を失った彼は、まるで別人。
章ごとに半信半疑で彼を取り巻く周囲の学生たちの視点に切り替わるため、物語をより立体的に楽しむことができます。
特に、過去の過ちを許す側と、許される側の感情の動きに注目です。
どんなに有名で立派そうに見える人でも、誰しもが、とんでもない失敗や間違いを犯します。
昨今でも、過ちが世間にそれが公表されると袋叩きにされる、という流れが見られます。
しかし、それでいいのでしょうか。
失敗を犯したことを責めるのではなく、更生する道を共に作っていくことが大切なのではないかなとこの物語を通して考えさせられました。
かといって、説教くさい話ではなく、マイナス地点からスタートした友情が育まれていく、爽やかな物語に仕上がっています。
作者のゴードン・コーマン(現在56歳)は、12歳の時の宿題で書いた作文で14歳にして作家デビューを果たし、本書を刊行した時点で90冊以上の作品を書き上げているとか。
多作な天才作家を追いかける旅の、1冊目にいかがでしょうか。
今回は、ゴードン・コーマン 著 千葉茂樹 訳『リスタート』(あすなろ書房)について書きました。