
【世界に強がることしかできない少女が、森での共同生活で得たものとは?】
気が遠くなるような孤独と、無力さを実感していた。そして、こんなときでさえ涙が一滴も出てこない自分を、恨めしく思う。まわりには誰もいないのに、泣かないクセがつきすぎているらしい。泣いたほうがすっきりするかもしれないのに。
(本文 より)
この一文を読んで、今、または、かつてのわたしと一緒だ。
多くの読者は、そう錯覚するのではないでしょうか。
母子家庭の主人公は、ことあるごとに干渉してくる母親にうんざりし、スマートフォンからつながるSNSの世界にどっぷりと浸かっていました。
いわばスマホ依存です。
そんな折、いとこの鏡花ちゃんに誘われて、林間合宿に参加を決めることから物語は始まります。
自分を植物にたとえるなら、まちがいなくあのアーティチョークだろうと舞は思う。…しかも、見た目だけじゃなくて性格までごつごつしているのだから、味の良いアーティチョークより悪いだろう。
舞は、素直になれない自分とは正反対のキラキラして可愛い鏡花ちゃんに劣等感を覚えています。
誰しもにコンプレックスや悩みがあって、それは表面を見ただけでは分からない。
そして、子供だって、意味もなく反抗しているわけではないのです。苦しくて、どうすればいいのか分からない。
だから、その歪みを発散させないといけない。
だからこそ、子供と大人も関係なく、人と触れ合ったり、話し合う必要がある。先入観なしに。
もしかしたら、その悩みはちょっとしたすれ違いや、幻のようなものかもしれないから。
パステルカラーでありながら、どこか影のある、そんな世界観を表すカバー表紙にも目を引かれます。
「誰も理解してくれない」と悩んでいる中高生だけでなく、それを見守る保護者の方にも手にとっていただきたい本です。
今回は、佐藤まどか著『世界とキレル』(あすなろ書房)について書きました。