
【好きなものは一つだけじゃないとダメなのか?】
「サッカーと裁縫、どっちか選ばなくちゃいけないのかな?」
じいちゃんはなにも答えない。
「大事なことが重なったとき、ぼくはどうすればいいんだろう」
だれも答えてくれない。きっと、自分で考えなくちゃいけない問いなんだ。
(本文 より)
主人公のトモはサッカー少年。チームメイトには隠しているけど、裁縫少年でもあります。
ひょんなことから、ハーブ園の少女リラと出会います。
リラは、身長が伸びてしまったら、母親から譲られたワンピースを着られなくなることを悲しんでいました。
そして、そのワンピースを彼女に合わせてお直しをする約束をするのですが…。
第9回ポプラズッコケ文学新人賞大賞受賞作。
この本は作者の小川雅子さんの初めての本とのことです。
ぶーんと音がして、顔を上げると中庭に続く木戸のところにミツバチが飛び回っているのが見えた。ライラックの花の方から来たのだろうか。静かだった庭に、命の音がする。
盛り上がりの場面ではないけれど、美しくて好きな文。
裁縫の表現が鮮やかで、自分でもやってみたいという気持ちにさせられます。
さりげなく説明がされているので、裁縫の知識がなくても大丈夫です。
大きく二つのテーマに沿って書かれているな、と思いました。
一つは、「男の子らしい趣味・女の子らしい趣味という差別への問いかけ」、
二つ目は「好きなものは一つに絞らないといけないのか」。
自分の好きなものを大切にしたい時に読みたい本です。
今回は、作/小川雅子 絵/めばち『ライラックのワンピース』(ポプラ社)について書きました。