
私は早く本に戻りたかった。ソファーにひとりで横になって、チョコレートを食べながら、「アンナ・カレーニナ」のページをめくりたかった。
ある日突然不眠になってしまった主婦のお話。
仄暗い描写が続くのに、読後救われたような気持ちになる不思議な作品でした。
ちなみに言うと、私は村上春樹が苦手です。
でも、それは、「僕」という男性一人称の視点から書かれていることが多いからなのかも。
あと、三宅香帆さんも書かれているように、「「僕」って悲しむ割にすぐ他の女の子と寝るしな…」
というのが引っかかっていたんだと思います。
うーん、なんだろ、と考えてみました。
男の人は、何か人生に拒絶されても、キャバクラやスナックに行くことがある種許容されていて、誰かを抱いたり触れ合うことで、癒されたり、立ち直る手段がある。
けど、女性にはそれがない。
今の時代、同じようなことをするのは可能だろうけれど、男性と違って、許されない風潮がある。
だからこそ、今まで読んだ村上春樹の著作を読んで、「この主人公は男の人だから、何をしても許されるからいいよね」みたいな気持ちがどこかであったのかもしれない。
だからこそ、それを覆したこの『ねむり』は、すんなりと受け入れられたのかもしれません。
共働きだったり、育児をしたり、逃れられない責任はいつでもつきまとう。
うまく言葉にできないけれど、
仕事だけ頑張っていればいいというわけではなく、
生活のバランスを成り立たせることに苦心している人はたくさんいる。
読書は自分の居場所を確保する、一種の聖域なのかもしれない。
教養のためとか、誰かのためとかじゃなく、
純粋に楽しむための読書をしてもいいんだよ。
そう気づかせてくれるからこそ、この短編小説は、
生活に疲れ切った人々に必要な作品なんじゃないかなと思いました。
学生時代は読書が好きだったのに、気づけば今はほとんど本を開くことがないな、と
感じている人にオススメの本です。
作中で大きな事件が起きているわけでもないのに、
久しぶりに固唾を飲んで一気読みした本でした!
結末の意味とか深掘りしていくともっと楽しそうだなー!
この記事では、村上春樹著『ねむり』をご紹介します。
ちなみに、三宅香帆さんが紹介されているのは、『TVピープル』収録の「眠り」ですが、
私はこちらの新版の方を読みました。少し言い回しなどを修正されているようです。
新版は挿絵がスタイリッシュでした!